「ライ麦畑でつかまえて」という作品をご存知だろうか。多くの人は名前だけは知っていると答えるだろう。この作品を一言で表すとしたら『中二病』だ。中二病とは思春期特有の思想・行動・価値観が過剰に発現した病態のことだ。騙し蹴落す卑劣な社会に対して、反抗的な態度を示す主人公は自堕落に暮らし思想に耽る。これだけを聞くと読む気がなくなると思うが、世界中から名作と謳われている。本作は、大人社会に対する純粋な子どもの反抗を描いた物語だ。
物語の主人公ホールデン・コールフィールドは16歳の青年で名門高校であるペンシー高校の生徒だ。しかし成績が振るわず、退学処分となってしまう。そして彼は親元に退学通知が届くまでは家に帰らないと決意し、とある事情で寮に戻れない彼は怪しげなホテルに泊まる。そこでの体験を彼が語る。本作の魅力は子供と大人の狭間にいる主人公の夢と現実に振り回され、しかしそこに美しい青春があることを描いているところだ。おそらく多くの人が体験したことがあり、共感できることが多いだろう。上質な文章を読める機会はそうそうにない。この機会に読んでみるのはいかがだろうか。
ライ麦畑でつかまえて
推薦文

ライ麦畑でつかまえて
- 著者:
- J.D.サリンジャー著; 野崎孝訳
- 出版社:
- 白水社
- ISBN:
- 9784560070512
- 所蔵:
- 中央図書館 開架
933.7:Rai

鳥取大学
工学部機械物理系学科
金村 一輝