19世紀のイタリア・ミラノを舞台に、煙突掃除夫の少年たちの友情を描いた物語です。主人公の少年ジョルジョは貧しさから人買いに売られ、故郷のスイスを離れてミラノで煙突掃除夫として働くことになります。ミラノには他にも売られてきたスイスの少年たちが煙突掃除夫として働いていますが、危険な仕事内容に加え、買われた先での虐待など様々な苦難が彼らを襲います。そのような中で少年たちが「黒い兄弟」という結社を結成し、互いに助け合いながら勇気を持って困難に立ち向かう姿は非常に感動的です。
実際にあった人身売買や児童労働を題材とした本作ですが、出版された時代を考えると違った側面が見えてきます。本作が最初に出版されたのは第二次世界大戦中のスイスであり、作者はナチス政権に抵抗したために祖国ドイツから逃れた亡命者でした。周囲の無理解や経済的な困窮に苦しむなど、異国の地で寄る辺ない亡命者は人身売買でミラノに来た少年たちと重なる部分があります。当時、作者が作品を発表できたのは現地スイスの友人の尽力があってのことですが、この物語の中にもジョルジョに手を差し伸べる現地の人々が登場します。作者は冒頭で「ジョルジョたちの友だちになってください」と読者に語りかけますが、この言葉には祖国を去らざるをえなかった人々に寄り添ってほしいという作者の願いが込められているのかもしれません。
黒い兄弟
推薦文

黒い兄弟
- 著者:
- リザ・テツナー著 ; 酒寄進一訳
- 出版社:
- あすなろ書房
- ISBN:
- 9784751521250
- 所蔵:
- 中央図書館 開架
943:Kur:(1), 943:Kur:(2)

鳥取大学
米子地区事務部
教職員