薔薇の名前 : Il Nome della Rosa

推薦文

薔薇の名前 : Il Nome della Rosa
著者:
ウンベルト・エーコ著 ; 河島英昭訳
出版社:
東京創元社
ISBN:
9784488013516 ほか
所蔵:
中央図書館 開架
973:Bar:(1)-(2)

 鳥取大学は2019年に70周年を迎えたわけだが、本書は2020年に原書刊行40周年、日本語訳刊行30周年を迎えている。14世紀のイタリアの修道院を舞台に、カトリックの神学論争を中心に様々な引用や暗喩を隠し扉のように散りばめた重層的な構造を持つ知の迷宮、もしくはロマンスグレーな名探偵(とイケメン助手)が修道院で起こる連続殺人事件をシャーロック・ホームズばりの鮮やかさで解決するミステリでもある。これが高いレベルで両立している(らしい)。「らしい」としたのは埋め込まれた暗喩などを私はほとんど理解できていない(わかるのはホームズとボルヘスくらい)からなのだが、それでも表面のミステリの部分だけでもとても面白く読めるのだ。暗号解読や迷宮探索、法廷ものの要素もありと大サービスで読者を楽しませてくれる。
 ところで舞台となる修道院内に文書館があるのだが、当時知識(=書物)は一部の特権階級のもので、外部への貸出どころか閲覧や立ち入りも厳しく制限されている。本書を読み返すたびに、現代の図書館のように誰でも自由に手に取れるようになるまでの来し方を想い、自分の意欲さえあれば膨大な知識を得ることができる環境のありがたみを再認識している。

鳥取大学
研究推進部

映画も大好き(P.N.)

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