無限のなかの数学

推薦文

無限のなかの数学
著者:
志賀浩二著
出版社:
岩波書店
ISBN:
9784004304050
所蔵:
中央図書館 新書・文庫コーナー
新書:IS:405

 岩波新書の中には,優れた数学の解説書がある.この本はその中の一つで,高校レベルの極限や三角関数の話から始まり,ニュートン,フーリエ,カントールを経て,20世紀に発展した現代数学の展開までを解説している.
 この本のテーマは,タイトルにもあるようにズバリ「無限」である.「無限」という言葉を聴くと日常生活にはあまり関係のない,何か衒学的な,子難しいだけで何の役にも立たない,といった否定的な印象を思い浮かべるかもしれない.確かに,かつていた努力家でお人好しのペーパーテストだけでのし上がった何処かの国の陸軍大臣のように「人間の精神は無限であるから戦争に勝てる.」などというおめでたいセリフが日本中を駆け巡った時代もあったのだから,その感想はあながち間違っているとは言えないかもしれない.しかし,この本の中で扱われている「無限」は,現代文明を支える量子力学を支える基盤へと繋がる極めて「実用的」であり,しかも同時に我々を取り巻く自然の謎を解き明かす手段である.そのような「無限」と「無限を扱う数学」,そして「無限への飽くなき挑戦を続けた数学者たち」の物語を,この本を通じて著者は,我々に提供してくれるのである.

鳥取大学
工学部化学バイオ系学科助教

早瀬 修一

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