幸福論

　生きづらいと感じることがありませんか？この本は即効薬ではありませんが，心にじんわりと効いてきます．
　この本は幸福に関する散文（プロポ）集であり，幸福に生きるためのヒントが示されています．ヒトは複雑な感情をもつ生物であり，日常生活の中で，人間関係に疲れたり，臆病になったりして，傷つき悲しみ，絶望を感じることがあります．しかし，不幸な感情にとらわれず幸福に生きるように思考することをアランは勧めています．
　ひとつの散文は3ページ程度であり，読むのに時間はかかりません．ただ，直ぐに腑に落ちる文章ばかりではありません．文は平易ですが，直接的でない言い回しもあり，何度読んでも理解できないところもあります．自分の琴線に触れるところに考えを巡らせながら，浸み込んでくるものを味わう本だと思います．
　この本の散文は，第一次世界大戦を挟んだ1910-20年頃にフランスで書かれました．この100年間に科学技術は絶え間なく発展し，私達はその恩恵を受けています．また，日本は第二次世界大戦以降，直接には戦争に参戦しておらず，平和が続いています．しかし，ヒトの悩みは，場所や時によらずあまり変わらないことが改めてわかります．好きな歌を聴くように，幸福に生きる望みや勇気を少し貰いたい，そんなときにお勧めの本です．