私は、皆さんが一度は読んだことがあるお話をお勧めしたい。
ただ、これまでに皆さんが出会ったものとちょっとだけ違うと思う。それは、現代語訳が星新一だということ。
私は、SF作家の洞察力に驚くとともに、この物語の構成力と想像力に圧倒された。見事なガイドというしかない。これまで和歌の掛詞の巧みさを読み飛ばしていた、危ないところだった。羽織ると地上での出来事を忘れてしまう衣、ドラえもんに出てきそうではないか。かぐや姫は罪人であるという発想の斬新さは読み手の想像力をも刺激する。この物語にスターウォーズのエピソードみたいなのが実はあって、どこかに埋もれているのではないか。できれば竹の中からみつかってほしい。
この物語は本当に素晴らしい。
私だけでないと思うが、月は「死」を連想させる。特に満月が夜空に浮かんで辺りを照らすさまは恐ろしい。思わず息をひそめてしまう。自分が生きているのか死んでいるのかわからなく感じさせる、そんな時すらある。
「死」は月からやってくるのではないか。かぐや姫は死にかけていて、帝は屋根の上や庭に兵隊を置いて守ろうとする。しかし、誰も「死」に触れることさえできない。大切な人は連れ去られてしまう。そういうイメージかな、と思う。
皆さんは、グローバルな時代に生きている。この物語を世界中の人たちに是非紹介してほしい。彼らや彼らの文化は月に何を思ってきたか、きっと面白い話になる。
竹取物語
推薦文

竹取物語
- 著者:
- 星新一訳
- 出版社:
- 角川書店
- ISBN:
- 9784041303252
- 所蔵:
- 医学図書館 ほか
913.31:Hos

鳥取大学
研究推進部研究推進課長
大場 亮平