途上国の人々との話し方 : 国際協力メタファシリテーションの手法

推薦文

途上国の人々との話し方 : 国際協力メタファシリテーションの手法
著者:
和田信明, 中田豊一著
出版社:
みずのわ出版
ISBN:
9784864260053
所蔵:
中央図書館 開架
333.8:Toj

 私は仕事柄、東南アジアに赴いてフィールドワークを行うことが多い。学生とともにタイ、カンボジア、ラオスなどの農村に出向き、農村住民の話に耳を傾ける「聞き取り調査」を実施する。実は、この「聞き取り調査」は簡単なようでかなり難しい。例えば、前回聞いた話と、今回聞いた話の内容が食い違うことなど普通にある。卒論・修論のための調査に行く学生達にとって正確な情報を得ることは大事なことなのだが、人々はそうそう容易く胸襟を開き、本音を語ってくれるとは限らないのである。
 今回、私が推薦したい本は、国際協力分野で経験の豊富な著者らによるもので、タイトルの通り、途上国の人々とどのように会話をしていけば、現実に迫ることができるかについて様々なエピソードを交えて教えてくれる本である。例えば、国際協力の場面において、村人らが本当に抱えている問題を知りたいときに、「問題は何ですか」「それはなぜですか」と聞くことの間違いを指摘する。それでは現実が見えないというのである。
 人々の本音や事の真相を明らかにする「巧妙なインタービュー」手法とは、いったいどのようなものなのか。ここでネタバレをするつもりはないが、ひとつだけ言えることがある。この本で書かれている方法とその背景にある考え方は、決して開発途上国での国際協力の場面だけに当てはまるものではない。自身も含めた人々のあり様に広く好奇心を持ち、社会の本質について知りたいと考える読者には、きっと役にたつのではないかと思う。

鳥取大学
副学長(国際交流推進担当)

安延 久美

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