生命・人間・経済学 : 科学者の疑義

推薦文

生命・人間・経済学 : 科学者の疑義
著者:
宇沢弘文, 渡辺格著
出版社:
日本経済新聞出版社
ISBN:
9784532357214
所蔵:
中央図書館 開架 ほか
404:Sei

 ノーベル経済学賞を擲って近代経済学のあり方を糺した「行動する経済学者」宇沢弘文先生と分子生物学者渡辺格先生の対談集です。人間、国家、科学、経済等広範なテーマをめぐる「疑義」について熱く語られています。40年以上も前の対談ですが、真剣勝負の緊張に漲り、古さを感じさせない鮮度に驚愕します。特に人間性をめぐっては、奇形、障がいといった繊細な問題についても迫真の議論が展開されます。また、国家の役割や科学のあり方をめぐっては、大学や学問の現状について痛烈に批判されています。混迷を極める現代社会の先行きを展望するための稀有な書だと思います。
 宇沢先生は米子市の出身で幼い頃に東京に転出されましたが、戦時中には日南町に疎開され、その生活体験が後の思想形成に大きな影響を与えたようです。先生の生涯については、昨年話題になった「資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界」(佐々木実著)という好著があります。
 私は、学生時代に宇沢先生の「自動車の社会的費用」を読んで大きな衝撃を受け、同郷であることを知り、二重の驚きと喜びを感じたことを今も鮮明に覚えています。また、県庁時代にお会いする機会に恵まれ、飾らない情熱あふれるお人柄に接することができ感激しました。
 なお、米子では宇沢先生の「社会的共通資本」の理論を学ぶ勉強会「よなご宇沢会」が活動を続け、毎年秋には記念フォーラムが開催されます。

鳥取大学
学長顧問(COC+事業担当)

法橋 誠

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