ダークレディと呼ばれて : 二重らせん発見とロザリンド・フランクリンの真実

推薦文

ダークレディと呼ばれて : 二重らせん発見とロザリンド・フランクリンの真実
著者:
ブレンダ・マドックス著 ; 鹿田昌美訳
出版社:
化学同人
ISBN:
9784759810363
所蔵:
中央図書館 開架
289.3:Dak

 生物の永遠と続く営みは何に由来するものか? その疑問に1950年代に真剣に取り組んだ科学者達がいた。ワトソンとクリックはこの生命の根幹をなす遺伝子DNAの二重らせん構造の発見であまりにも有名であるが,その影に彼らと同等,あるいはそれ以上にDNAの構造決定に重要な役割を果たした女性科学者ロザリンド・フランクリン博士がいることを忘れてはいけない。この本は,15年以上も前に執筆翻訳されたものであるが,フランクリンの生まれ,生い立ちから研究に対する信念に至るまで詳細に書かれており,生化学や分子生物学を勉強している学生さんには是非一度読んでほしい本である。
 フランクリンはX線構造科学者で,ロンドンのキングスカレッジでモーリス・ウィルキンス博士と一緒にX線を使ってDNAの構造を研究していた。同じ頃,ケンブリッジのキャベンディッシュ研究所ではジム・ワトソンとフランシス・クリックがDNAの構造モデルを構築しようと画策していた。フランクリンは当時の女性科学者にとっては不遇な時代もあって,ウィルキンスらとはあまり仲が良くなかった。「ダークレディ」との表現は,ウィルキンスがワトソンとクリックにフランクリンが研究室を去るという知らせを書いた手紙の中で使われたものである。この本を読めばフランクリンが「ダークレディ」ではなく「ブライトレディ」であることがよく分かる。是非お薦めする。

鳥取大学
理事(研究担当、IT担当)・副学長

河田 康志

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