植物病理學

推薦文

植物病理學
著者:
大森順造, 山田玄太郎著
出版社:
博文館
ISBN:
所蔵:
中央図書館 閉架書庫(農専)
326:42

 皆さんは、鳥取大学の礎を築いた山田玄太郎博士をご存じだろうか?
 創立70周年を迎えた鳥取大学の歴史をさらに遡れば、その前身は1921年(大正10年)、盛岡、鹿児島に次ぎ全国3番目の高等農業(林)学校として開校した鳥取高等農業学校であり、2021年には創立100周年となる。山田先生は、その初代校長(学長)として、前任の盛岡高農(現・岩手大学)から鳥取の地に赴任した。ちなみに、盛岡高農教授時代の学生には、宮沢賢治がいた。当時、地の利を得なかった鳥取において、16年間にわたって研究・教育・運営に傾注し、本校の名を全国的に知らしめた。
 先生は東北帝国大学(現・北海道大学)農学部で本邦の植物病理学の開祖である宮部金吾博士に学び、専門は“銹(さび)病”であった。特に菌分類学の大家であり、リンゴ赤星病菌の学名Gymnosporangium yamadaeは、先生の名前に由来する。
 1904年(明治37年)に出版された本書は、「植物病理學は植物学の一分科にして植物の病害に就て其徴候及源因を探求し之が救治又は豫防の法を講ずる學なり」という格調高い文から始まる。本書の306ページからは、リンゴ赤星病菌の解説があり、100年以上経過した今読んでも、詳細かつ正確な記述は見事である。
 現在の農学部の中庭には、先生の銅像が設置されており、今も私たちを優しいまなざしで見守っているようである。なお、写真はその銅像と先生自らの手による植物標本(1924年作)である。

鳥取大学
連合農学研究科副研究科長

児玉 基一朗

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